経営改善のカギは、看護管理者にある
病院経営において、重要な要素となるのは「医療の質」と「財務」です。そして、これらの要素を効果的に結びつける中心的な存在が看護管理者であることをご存知でしょうか?病院経営コンサルタントとしてさまざまな現場に関わる中で、この確信に至りました。
病院経営とは「医療の質」と「財務」の融合
一般的に経営というと、「赤字、黒字」や「財務管理」を連想する方が多いかもしれません。しかし、病院経営においては「病院経営 = 医療の質 + 財務」が基本です。医療機関の主な収入源である診療報酬は、患者さんに質の高い医療サービスを提供することを目的としており、2年ごとに改訂されています。
診療報酬には、医療の質に関わるさまざまな要件が含まれています。たとえば、入院基本料の看護職員配置基準(7:1看護や10:1看護など)や、医療安全管理体制、院内感染防止対策、褥瘡対策、栄養管理体制、身体的拘束を最小化する取組などが挙げられます。これらは、入院基本料を患者さんに請求するためには、遵守すべきことです。
また、記録や同意書、患者さんおよびご家族への説明などの業務も、診療報酬を得るために欠かせません。さらに、近年の診療報酬改定ではチーム医療の推進が高く評価され、多職種連携の中心には多くの場合、看護師が関わります。
看護部は病院組織内で最も多くの人員を抱える部門であり、その活動は病院経営全体に大きな影響を与えます。そのため、看護管理者が経営への参画意識を持つことは、病院経営の成功において極めて重要な要素なのです。
看護管理者に求められる経営感覚
経営改善の基本的な考え方は非常にシンプルです。「収益を上げる」または「費用を減らす」、理想的としてその両方を実現することです。看護管理者の方々には、まず自部署—たとえば病棟、外来、手術室、透析室、訪問看護ステーションなど—の患者さん受け入れ体制を整える必要があります。それは、あくまでも限りある資源(人材、構造、物品などなど)の中で、達成しなければなりません。
収益を上げるためには?
病院の収益は、「患者数 × 診療単価」で成り立っています。そのため、収益を上げるには次の2つの方法があります:
- 患者数を増やす
- 診療単価を上げる
具体的な第一歩として、自部署で快く患者さんを受け入れる体制づくりに取り組むことが重要です。私たちコンサルタントが日々分析を行う中で導き出される結論は、多くの場合、「患者数を増やす」ことにたどり着きます。そのための第一歩として、患者さんを快く受け入れるための意識の浸透が不可欠です。
看護部の役割と課題
患者数の増加について、「それは医師の責任ではないか」あるいは「患者さん次第ではないか」と思われるかもしれません。しかし、実際には看護部の体制が課題となり、患者数の増加が妨げられているケースが多々あります。
ここでよく挙げられるのが「人が足りない」という問題です。適切な人材配置は重要ですが、それが費用—つまり人件費の増加を伴うものであることを認識しなければなりません。患者さんの安全を最優先する医療現場においても、経営度外視で人員を配置することは、病院経営の継続性を損なうリスクが高まります。
看護管理者には、限られた資源(特に人材)の中で安全・安心な医療を提供しながら、収益(患者数 × 診療単価)を維持・向上させるための経営感覚が求められます。
看護管理者が果たすべき役割
病院の経営改善を支える中心的な存在として、看護管理者には以下の役割が期待されています:
- 経営参画意識の向上 看護部門が病院経営に与える影響を認識し、経営に積極的に関与する。
- 現場改善のリーダーシップ 現場の課題を的確に把握し、スタッフを巻き込んで改善を進める。
- スタッフ育成とモチベーション向上 チームの能力を引き出し、働きやすい環境を整える。
- 患者中心の視点を維持する 経営の改善を目指しつつ、患者の安全と満足度を最優先に考える。
終わりに
看護管理者は、病院経営における重要な鍵を握っています。その役割を果たすためには、経営感覚を磨き、自部署の改善を具体的に進めることが欠かせません。「医療の質」と「財務」のバランスを保ちながら、病院全体の成長に貢献する看護管理者の存在が、これからの病院経営を支える柱となるでしょう。
病院の未来を担う看護管理者として、ぜひこの機会に自分自身の役割を再確認し、経営改善に向けた新たな一歩を踏み出してみてください。