病院経営改善の重要ポイント
病院経営における重要な課題の一つが、適切な施設基準の維持と管理です。その中でも、「様式9」(看護配置基準の遵守)の管理は経営安定と収益維持に直結する重要なツールとして認識されています。本記事では、適時調査の背景や「様式9」の役割、コロナ禍における特例措置を交えながら、病院経営改善のポイントを解説します。
適時調査の背景
適時調査は、医療機関が届出施設基準を満たしているかを確認するために行われます。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度以降多くの調査が中止または延期され、病院外での実施が限定的に行われる状況が続いていました。その後、各都道府県の適時調査が再開され、看護配置に関する基準を満たせていなかったことにより大規模な返還事例のニュースが続いています。その背景はくわしくは分かりませんが、恐らく、看護配置に関する施設基準上の知識不足や情報不足、認識不足があったのではないかと思われます。
施設基準の重要性
まず、病院が診療報酬を適切に受け取るためには、施設基準を満たし続けることが不可欠です。特に以下の項目が重要視されます:
- 看護職員数と配置基準
- 7対1、10対1看護などの基準を満たすための人員配置。
- 夜勤体制の適切な運用と記録。
- 平均在院日数
- 保険診療患者のみを対象とした計算基準を遵守。
- 重症度、医療・看護必要度
- 基準値を超える患者割合の維持。
など。これらの要件を満たせない場合、診療報酬の減額や返還が発生するリスクがあります。
「様式9」の役割と管理
「様式9」は、施設基準を証明するために必要な看護職員の勤務時間や配置状況を記録する重要な書類です。
特に以下の点がポイントです:
- 正確なデータ入力:勤務表や病棟管理日誌の記載内容が正しく反映されているか確認します。
- 時間数の計上:日勤、夜勤、総夜勤の時間数を正確に入力。
- 計上ルールの徹底:休憩時間や会議時間など、計上対象外の時間を明確に区別。
コロナ禍における特例措置
新型コロナウイルス感染症の影響により、厚生労働省は施設基準に関する特例措置を設けました。この特例により、病院は以下の緩和を受けることができていました。しかし、現在は、すでに特例措置は終了しています。よく確認ください。
- 定数超過入院の減額措置免除
- 夜勤時間数や看護要員数の一時的な変動の容認
- 平均在院日数や重症度基準未達成時の届出不要
実務におけるポイント
「様式9」を適切に管理するためには、以下の実務ポイントを押さえておく必要があります:
- 勤務表と病棟管理日誌の整備
- 勤務変更時の記録を確実に行う。
- 病棟師長や副師長等の管理者教育と意識向上
- 「様式9」の重要性を理解してもらい、勤務表作成時に意識し、かつ変更が生じた際や会議や研修、委員会等の除外時間等の正確な記録を徹底。
- ルールの活用
- 様式9を作成するうえでは、多くのルールがあります。そのルールを理解したうえで運用すれば、必ずしも基準を満たしていないからと言ってすぐに対処を要しません。正しい理解が重要です。
病院経営改善のための提案
「様式9」の管理を徹底することは、病院経営の安定化に大きく寄与します。しかし、それだけでは十分ではありません。以下の取り組みを併せて行うことで、さらに効果的な経営改善が可能になります。特に、昨今では看護師不足が病院経営に大きな影響を及ぼしています。その中で、病棟閉鎖や病床制限に至っている病院も少なくないでしょう。しかし、この様式9を用いて、データの分析を行い、看護師の適正配置のシミュレーションを行うことで、今の看護師人数でも病棟閉鎖を解消し、病棟を再開することができた事例もあります。正しい理解と、分析、そのうえで、シミュレーションを行い、施設基準を遵守しつつ、病院経営改善につなげていくことができます。
終わりに
病院経営において、「様式9」の管理は施設基準維持と収益確保の要です。正確な記録と適切な管理を行うことで、診療報酬を確実に受け取り、安定した経営基盤を築くことができます。データ分析や看護師の適正配置を検討し、さらなる経営改善を目指しましょう。困ったときにはいつでも相談ください。