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スマートフォン対応マイナ保険証開始の背景
令和7年9月19日より、マイナ保険証がスマートフォンでも利用可能となりました。もっとも、現時点ではスマートフォン対応の環境が各医療機関で完全に整備されているとは言えず、医療現場全体としてはまだ課題感が残っている状況です。一方で、スマートフォンにマイナ保険証を登録することにより、マイナンバーカードを持ち歩かなくても保険医療機関を受診できるようになる取り組みは、今後さらに進んでいくと考えられています。
本記事では、その現状と、スマートフォン対応に至るまでの流れについて整理していきます。
動画も配信していますので、よろしければご覧ください。
【出典】
厚生労働省「マイナ保険証の利用促進等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001548631.pdf
マイナ保険証利用の現状とこれまでの課題
現在、健康保険証に代わり、マイナンバーカードを用いたマイナ保険証の利用が促進されています。医療機関側の受け入れ体制も整備が進み、ほぼすべての医療機関・薬局でマイナンバーカードによる資格確認が可能な状況となっています。しかし、マイナンバーカードは手続きの場面以外では日常的に持ち歩く習慣がない方も一定数存在します。そのため、マイナ保険証の利用が進む一方で、有効期限が切れるまでは従来の保険証を使い続けたいという声も依然としてあります。

スマートフォンでのマイナ保険証利用
こうした背景の中、マイナ保険証をスマートフォンに登録し、スマートフォン自体を保険証として利用できる仕組みが導入されました。これにより、患者の利便性向上や、医療機関窓口での受付業務の円滑化が期待されています。

令和7年4月に実施された実証事業の概要
スマートフォンでのマイナ保険証利用に先立ち、令和7年4月には外来診療におけるスマートフォン搭載対応の実証事業が実施されました。この仕組みでは、スマートフォンに電子証明書を搭載した上で、医療機関に設置された顔認証付きカードリーダーにスマートフォンをかざして資格確認を行います。これまでマイナンバーカードを差し込んでいたカードリーダーを活用しつつ、スマートフォンでの利用を可能にするものです。

実証事業から見えた患者側の評価と課題
実証事業の結果として、患者側からは以下のような意見が挙げられました。
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- カードを取り出す手間がなく、受付がスムーズだった
- マイナンバーカードを持ち歩くことによる紛失の心配がなくなった
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一方で、課題も指摘されています。
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- スマートフォンへの初期設定が難しかった
- どこにスマートフォンをかざせばよいのか分からなかった
- 操作方法が分かりにくかった
- 機種変更時のセキュリティ面に不安がある
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利便性の向上を感じる声と同時に、操作性や理解の面でのハードルも明らかになりました。
医療機関・職員側から見た運用上の課題
医療機関や職員側からは、以下のような意見が出ています。
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- 来院前にスマートフォンへのマイナンバーカード追加を完了しておいてほしい
- 受付で登録作業が発生すると、対応に多くの時間を要する
- 電子証明書の署名用パスワードが分からず、利用を断念する患者がいた
- 顔認証付きカードリーダーの操作を行わず、いきなりスマートフォンをかざす患者が多かった
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これらの点を踏まえ、運用面での工夫や周知が今後の課題とされています。
医療機関側に求められる今後の対応
医療機関側としては、既存のシステムの大規模な改修やカードリーダーの交換は不要とされています。今後は、顔認証付きカードリーダーに対応した汎用カードリーダーを購入・設置することで、スマートフォンでのマイナ保険証利用に対応できるとされています。また、スマートフォン対応施設であることを示すステッカーを掲示し、患者が事前に確認できるようにすることも求められています。

患者側に求められる事前準備と利用の流れ
患者側には、以下のような事前準備が必要とされています。
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- 自身のスマートフォンが電子証明書の利用に対応しているか確認する
- 健康保険証利用の登録を行う
- 来院前にスマートフォンへマイナンバーカードを追加しておく
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これらを済ませた上で、スマートフォン対応医療機関では、スマートフォンをかざすことでマイナ保険証として利用できる流れになります。

保険証廃止の流れとスマホマイナ保険証の位置づけ
現在示されている方針では、従来の保険証は2025年10月をもって原則使用できなくなる方向性が示されています。今後はマイナ保険証による受診が基本となり、その手段の一つとしてスマートフォンでの利用が位置づけられています。また、スマートフォンでの読み取りが何らかの理由で失敗した場合には、マイナポータルにログインし、資格情報画面を提示することで受診可能とする対応も想定されているようです。

現時点での所感と今後の見通し
スマートフォンでのマイナ保険証利用は、開始されたばかりの取り組みであり、実際に利用した経験がないという声も多く聞かれます。高齢者にとってのハードルや、職員の業務負担、情報セキュリティへの不安など、さまざまな課題が想定される一方で、これは時代の流れとして避けられない変化とも言えます。最終的には、医療機関側の業務負担軽減や受付業務の効率化につながっていくことが期待されており、今後も課題や運用状況について継続的に情報を追っていく必要があると考えられます。

