こんにちは。病院経営コンサルの勝又です。

本テーマはyutubeに動画をアップしていますので、ご興味のある方はご覧ください。

さて、皆さん、最近ニュースで「病院経営が危機」という情報を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。決して他人ごとではなく、もしかしたら、皆様の病院さまでも、起きていることかもしれません。本日のテーマは、20204年度ベースアップ評価料があっても、人件費や物価高騰で大幅減益(利益が減っている)病院が増えている理由について一緒に見ていきます。

引用元

緊急調査(2024 年度診療報酬改定後の病院経営状況)協力のお願い

2024 年度 病院経営定期調査 概要版 -最終報告(集計結果)

2024年度診療報酬改定の影響等に関するアンケート結果

2024年度がもうすぐ終わり、2025年度に入ろうとしています。今まさに、病院経営にとって何が起きているのかについて説明していきます。

早速ですが、こちらをご覧ください。

2024年1月22日に日本病院会をはじめ5つの病院団体から国に対しこのような要望が出されました。

病院の医業利益率は年々悪化してきており、特に、ポストコロナ後、急性期一般病院を筆頭に急激に悪化しています。ここで示されているデータは、まだ2023年度(昨年度)時点のデータです。しかしながら、病院団体は2023年度に比較し、2024年度はさらに病院経営が悪化している窮状を訴え要望を出したと当時に、2024年度の病院の経営状況についての調査を実施しました。それがこちらです。

それでは、次に、2024年11月16日に公開された2024年度病院経営定期調査の概要版を見ていきます。

一部抜粋したこちらのグラフをご覧ください。

こちらは、2018年度コロナまえから、2019年度コロナ突入、2020年度~2022年度はコロナ禍、そしてポストコロナの2023年度までの6か年のデータです。一病院あたりの①医業収益、②医業費用、③医業利益(①ー②)をしてしています。

ここでのポイントは1つ目に緑色の棒グラフです。コロナ禍の2020年度~2021年度は減収しているものの、がポストコロナの2023年度は医業利益はコロナまえに比較し増収しています。しかしながら、緑の医業収益の伸びに比較し、青色の棒グラフ=医業費用の増大が大きいことにより、病院の医業利益=黄色の棒グラフは、コロナ前よりも悪化しています。

ただ、これだけを見ると、コロナ禍から悪かったのに、なんで急に今、騒いでいるのか疑問に思うことでしょう。次のグラフをご覧ください。

今度は、緑の棒グラフが③医業利益(①ー②)の再掲で、青の棒グラフが医業外収益です。病院には本業の医業で得る収益のほかに、補助金や助成金、給付金といった医業外収益があります。ご覧の通り、コロナ禍の2020年度~2022年度までコロナの補助金等の医業外収益により青の棒グラフが突出していることがわかります。世間でもよく取り沙汰されましたが、コロナの補助金によりコロナ禍の病院経営は成り立っていました。そこに来て、2023年度にコロナの補助金が10月から終了となり、診療報酬上の特例措置も終了し、医業外収益が大幅に減ったところに、物価高騰の波が押し寄せてきていました。年々上がってきた医薬品費や診療材料費、また、委託費等も高騰し、医業収益の増収だけでは苦しくなってきていました。

こちらをご覧ください。

病院団体から国に出された要望書の中のデータですが、これまで説明した通り、医業収益も確かに増収しているにも関わらず、それ以上に医業費用がかさんでしまっている状況です。右のグラフは経費の変化を表していますが、給与費も上がっていますが、それ以上にその他の経費、すなわち医薬品や診療材料等の経費が増大していることがわかります。

しかしながら、これは、2023年度までのデータです。今、2024年度が終わろうとしているこの時期に病院団体が訴えているのは、2023年度以上に2024年度は病院経営が危機に瀕しているからです。

このデータは2024年度の病院経営定期調査からの抜粋ですが、診療報酬改定が施行された直後の2024年6月と前年度比較したデータになります。単月だけ見ても、増収減益(増収しているものの、経費が増大し、利益が減っている)になっていることがわかります。これは積み重なり、2024年度の各病院、特に大規模な急性期病院を筆頭に、急性期一般病院の経営が非常に危機的状況になっているのです。

2023年度に比較し、大きく変わった点の1つは人件費です。今年度は診療報酬改定のベースアップ評価料に対応するためにベースアップを実施した病院も多く、ベースアップ評価料で得られる報酬以上の人件費高騰になっている病院も多々あります。自治体病院等は国の人事院勧告に則ることから、大幅な持ち出しが生じ、給与費の伸びは2023年度の比ではないほどに増大している病院が大変苦しい経営状況に陥っています。

最後に2024年度の経営状況について実施されたアンケートをお示しします。

診療報酬改定の影響等について独立行政法人福祉医療機構が実施したアンケートになります。こちらも、増収している(もしくは収益は横ばい)状態と回答している病院が75%近くあるものの、利益は減っている(=減益している)と回答した病院が約43%に上ります。

以上のことからもお分かりいただけました通り、2024年度現在、病院経営が非常に苦しい状況に置かれています。そこで、病院団体は緊急調査を実施し、今後、さらに国に要望を出す予定となっています。今後、この調査結果等も情報提供していきたいと思います。

本日も最後までご覧いただきまして誠にありがとうございました。