様式9とは何か?看護部長が頭を抱える悩み

今回は、看護部長の皆さんにとって大きな悩みの種のひとつである「様式9」について解説していきます。看護師の中には「様式9を見たことがない」「何のことかわからない」という方も多いかもしれません。そのため、かなりニッチな内容になりますが、実務に携わる方にとって少しでも参考になればと思います。

様式9の基本構造と注意点

まず、様式9とは何かという点から説明します。多くの病院では、すでに様式9の計算が可能なシステムを導入しているか、あるいはExcelなどで自動計算ができるようなテンプレートを使っていることが多いです。ですが、最も大変なのはこの様式9に必要な「勤務実績表」の入力方法ではないでしょうか。そこで今回は、この入力方法を中心に、様式9の基本的な構成とポイントについて丁寧に解説していきます。

病棟数・病床数の記載方法

様式9の冒頭には、まず保険医療機関の名称、届け出をしている病棟の入院種別、病棟数などを記載する必要があります。注意したいのは、病院全体の病棟数ではなく、届け出にかかる病棟数を記入するという点です。たとえば、急性期一般入院基本料1を届け出ている病棟が3つ、回復期リハビリテーション病棟が1つ、地域包括ケア病棟が1つある場合には、病院全体では5つの病棟が存在するとします。ただ様式9に記載するのは同一種別で届け出ている入院基本料、ここでは急性期一般入院基本料1を届け出ている病棟数=3、病床数はたとえば120となります。そのほか、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟のそれぞれの様式9の作成が必要です。

看護要員配置加算のチェック

次に進むと、看護要員の配置にかかる加算の届け出についての記入欄が登場します。今回は「急性期一般入院基本料1」を軸に話を進めていくため、赤枠で囲まれた加算項目に注目します。

様式9

急性期における代表的な加算には、

  • 急性期看護補助体制加算(25対1〜75対1)
  • 夜間急性期看護補助体制加算
  • 看護職員の夜間配置加算

などがあります。これらの加算については、既存の届け出・新規の届け出のいずれかを選択してチェックを入れる形式となっています。

掲載されていない加算に注意

補足しておきたいのは、様式9のこの欄に掲載されていない加算が存在するという点です。「看護補助体制充実加算」や「夜間看護体制加算」などは、配置そのものに関わらないためここに記載されていませんが、実際には届け出が可能な加算です。「様式9に載っていない=届け出不可」と誤解してしまうケースもあるため、該当する加算については個別にチェックが必要です。

数値入力に関する実務ポイント

1日平均入院患者数の計算

続いて、実際に記入が必要な数値入力の項目に移ります。まずは「1日平均入院患者数」です。これは、直近過去1年間の患者数を基に算出する平均値となり、看護部長一人で出すのではなく、医事課などの他部署と連携して取得する必要があります。また、様式9は毎月作成するものなので、1日平均入院患者数の対象期間は月ごとに1ヶ月ずつずれていきます。

平均在院日数の入力

次に記入するのは「平均在院日数」です。これは直近過去3ヶ月間のデータをもとに計算されます。こちらも看護部長が単独で出すものではないと思いますので、医事課などとの情報共有を経て記入してください。

増床時の患者数補正について

もう一つ重要なポイントとして、「増床した際の1日平均入院患者数の補正ルール」があります。今回は急性期一般入院基本料を対象として説明しますが、もし届け出の6カ月前以内に病棟を増やした、または今後増やす予定がある場合、1日平均入院患者数に増床分の80%を加算した数を用いる必要があります。

たとえば、120床の病棟に対して、過去1年間の1日平均入院患者数が100人だったとします。そこに40床を増床して合計160床にした場合、増床分の40床に80%を掛けた「32人」を加算し、合計132人を「1日平均入院患者数」として半年間様式9に記載しなければなりません。このルールは見落としがちですが、増床する予定がある病院では必ず把握しておくべき内容です。

夜勤時間帯の設定とその影響

様式9には「夜勤時間帯」を記載する欄もあります。これは、病院ごとに自由に設定できる16時間の夜勤時間帯で、必ず午後10時から翌朝5時を含める必要があります。たとえば、夜勤時間を16時から翌朝8時と設定する病院もあれば、17時から翌朝9時というケースもあります。設定された夜勤時間帯に応じて、勤務実績表の入力内容や集計方法も変わってくるため、夜勤時間帯の決定は戦略的に検討する価値があります。

夜勤72時間ルールと実人数のカウント方法

「夜勤72時間ルール」とは、急性期一般入院基本料を届け出ている病棟では、1か月あたりの平均夜勤時間が72時間以内であることが求められるというルールです。仮にオーバーしてしまっても、3ヶ月間以内ので1割以内の変動(つまり79.2時間以内)であれば、許容されるとされています。この項目だけは、1か月ごとではなく、4週間(28日間)を1サイクルとした計算も可能です。この場合、2つの様式9を作成する必要があり、若干手間は増えますが、柔軟な運用が可能となります。

また、計算の分母の実人員数の対象となるのは、夜勤時間帯に勤務した時間が「月16時間以上」の看護職員で、これに該当しない場合は対象外となります。夜勤専従者については、実人員数(分母)および夜勤時間数(分子)のいずれにも含めない扱いになります。つまり、夜勤時間数が72時間以内になるように調整するためには、夜勤時間帯に16時間以上勤務する通常の看護師を「いかに多く含めるか」と、夜勤専従者の効果的な導入が鍵になります。

様式9

様式9の加算等を届け出ている場合

看護要員配置等を届け出ている場合には、様式9で計算して毎月満たせているかどうかを確認する必要があります。急性期看護補助体制加算は月平均1日当たりの看護補助者の必要数が、1日看護補助者配置数の実績値に対して上回っていればクリアできているということになります。ここも必ず確認するようにしましょう。

実績表の記載方法と対象者の取り扱い

勤務実績表を記載する際には、看護師、准看護師、そして看護補助者をそれぞれ職種別に記載する必要があります。また、保健師や助産師については、看護師の欄に記入することになっています。一方で、病院全体の看護管理に専従している看護部長、外来や手術部門に勤務している者、または看護師養成所などで専任教員として勤務している者などについては、病棟での勤務を伴わない場合は病棟勤務実績表に記載しないことが原則です。ただし、普段は外来や手術部門で勤務していても、一時的に病棟業務を兼務した場合や、兼任している場合は、その時間のみ「病棟勤務時間」として実績表に計上することができます。

雇用勤務形態と病棟以外の勤務者の記載方法

短時間正職員は「雇用勤務形態」の欄に「短時間」に「1」を記入します。また、外来や手術部門、オペ室などで勤務している、いわゆる「病棟以外」に従事している職員については「兼務」に「1」を記入します。

区分 該当者 記載内容
常勤 フルタイム職員 「常勤」に「1」
短時間正職員 所定労働時間が短い正職員 「短時間」に「1」
兼務 病棟以外(外来、手術室など)にも勤務している 「他部署兼務」に「1」

勤務実績表は1日を24時間とし、「日勤時間帯(8時間)」と「夜勤時間帯(16時間)」に分けて記入します。病棟勤務中の休憩時間については勤務時間として計上しますが、残業時間は含めません。たとえば、8時から16時の勤務で16時以降も働いたとしても、その時間は実績表には記載できません。

計上できる研修・会議と除外される業務

勤務実績表に計上できるのは、病棟業務や看護業務に直接関連する業務に限られます。具体的には、以下のような活動が該当します。

  • 入院診療計画
  • 院内感染防止対策
  • 医療安全管理体制
  • 褥瘡対策及び栄養管理体制
  • 身体的拘束最小化を満たすための対策

これらに関連した委員会、研修、チーム活動などは「病棟勤務時間」として計上が認められています。逆に、それ以外の研修やその他などは原則として計上不可です。たとえ「看護に関わっている」と思われるものであっても、制度上は除外する必要があります。

夜勤の扱いと72時間ルールの考え方

夜勤従事者については、勤務実績表の「夜勤の有無」欄に以下のように記載します。

  • 夜勤専従者は夜勤の有無の欄で:「夜専」に「1」を記入
  • 月16時間以上夜勤時間帯に勤務した者:「夜勤有」に「1」を記入
  • 月16時間未満の場合:「夜勤無」に「1」を記入
  • 短時間正職員の場合で12時間以上:「夜勤有」に「1」記入

この基準が重要なのは、「夜勤72時間ルール」に関係しています。実人員数(分母)を増やすことで、総夜勤時間数(分子)とのバランスが調整され、1人あたりの夜勤時間が72時間未満に抑えやすくなるという仕組みです。

該当者 夜勤有無欄の記載
夜勤専従者 「夜専」に1(※実人数にはカウントされない)
夜勤時間帯に16時間以上勤務 「夜勤有」に1
16時間未満勤務 「夜勤無」に1
短時間正職員で12時間以上勤務 「夜勤有」に1

夜勤専従者の記載方法

夜勤専従者については、勤務をしていたとしても「夜勤の有無」は「無」に「1」と記載します。これは、その職員が実人数にはカウントされない扱いになるためです。そして、「夜専」欄に「1」を記入することで、その方は夜勤の実人数から除外されます。これは、夜勤のみを行う職員が全体の夜勤時間数には貢献しているものの、分母としての「実人数」には含めない取り扱いがなされているためです。

勤務時間の内訳と記載方法

勤務実績表は3段構成になっており、それぞれ以下のように記載します。

  • 上段:日勤時間帯(8時〜16時など)に勤務した時間数
  • 中段:夜勤時間帯に病棟で勤務した時間数
  • 下段:病棟以外を含む夜勤時間帯の総勤務時間数
項目 記載位置 備考
日勤時間帯の勤務時間 上段 例:8:00〜16:00
夜勤時間帯の病棟勤務時間 中段 病棟での実働時間のみ
夜勤時間帯の総勤務時間 下段 会議など病棟外の時間も含む

たとえば、16時から翌朝8時までの夜勤勤務をした場合、もし16時から17時までが会議であれば、その1時間は中段の「病棟勤務時間」からは除外しますが、病院にいて勤務していた事実があるため、下段の「総夜勤時間数」には含める必要があります。このように、勤務時間内でも病棟外の活動については適切に区分して記載することが求められます。

看護補助者の事務的業務の扱い

看護補助者についても、勤務時間のうちで「事務的業務」が占める割合が5割以上であれば、勤務実績表の該当欄、事務的業務に「1」を記載します。

実際の記載例と職員ごとの分類

勤務実績表の記載にあたっては、以下の項目を入力します。

  • 職種(看護師、准看護師など)
  • 病棟名
  • 職員の氏名
  • 雇用形態(常勤・非常勤・短時間など)

繰り返しになりますが、常勤の方には「常勤」に「1」、短時間勤務なら「短時間」に「1」を記入します。外来やオペ室などに勤務している場合には「常勤」に「1」、「兼務」に「1」を記入することで、病棟以外で勤務していることが分かるようにします。また、夜勤に関しては、月に16時間以上夜勤時間帯に勤務していれば「有」に「1」が入ります。勤務時間が16時間未満であれば「無」に「1」が入るという区分になります。このように、それぞれの職員について「雇用形態」と「夜勤の有無」の両方を適切に管理し、実際に夜勤を行っていたかどうかを勤務時間と照らし合わせて判断する必要があります。

時間の区分と計算方法

勤務時間の記載では、時間を小数で表す必要があります。

  • 60分は1.0
  • 45分は0.75
  • 30分は0.5
  • 15分は0.25

という形で記入します。たとえば、ある職員が夜勤中に30分間の会議に参加した場合、その30分は病棟夜勤時間(中段)からは除外しますが、総夜勤時間(下段)には含めます。このように、時間の正確な記録が必要となります。

夜勤時間の設定による計上の違い

夜勤の時間帯設定によって、勤務実績表の記載内容が変わることもあります。たとえば、夜勤時間を「16:30〜8:30」と設定している医療機関では、16:30〜0:00の7.5時間、翌日の0:00〜8:30の8.5時間は夜勤時間として計上されます。一方で、夜勤時間帯を「17:00〜9:00」と設定している医療機関において、実際の夜勤の勤務時間は「16:30〜8:30」だった場合には、計上時間が変わります。この場合、16:30〜17:00までの0.5時間は日勤時間として計上され、17:00〜0:00の7.0時間、翌日の0:00〜8:30の8.5時間が夜勤時間として計上されます。つまり、勤務時間自体は変わらなくても、設定された夜勤の枠によって記載される時間帯が異なるのです。このように実際の勤務時間と、各医療機関において設定している夜勤時間には相違がある医療機関もありますので、正しく計上することが求められます。

申し送り時間の取り扱い

申し送り時間については、勤務実績への計上方法を2つから選ぶことができます。

1つ目は、申し送りをする側・される側の両方が勤務時間に含める方法です。

2つ目は、申し送りをする側はその時間を勤務時間から除外し、受ける側は勤務時間として計上する方法です。

これらは月単位で一貫して運用する必要があります。ただし、一部の職員が実際に看護提供を行っていた場合、その時間を勤務時間に含めても構いません。現場の実態に合わせて柔軟に判断されるのが望ましいです。

勤務パターンの違いと申し送り除外の影響

仮に、日勤が8:00〜16:00、夜勤が16:30〜8:30の場合、申し送り時間を除外するかどうかで夜勤の総勤務時間数は大きく変わります。30分の申し送り時間を除外する運用にすると、夜勤総時間が減少します。ただし、夜勤従事者として必要な実人数も減る可能性があります。逆に申し送り時間を除外しない運用にすると、勤務時間が増えるので、その分、必要な人員数が増加する可能性もあります。

たとえば、3病棟ある病院で、日勤職員が3病棟で21人/日、夜勤者が9人/日、加えて短時間勤務者や遅出勤務者がそれぞれ3人/日いたと仮定します。このような条件下で、申し送り時間を「あり(30分)」として計上した場合、総夜勤時間数は約5115時間になります。これを基に72時間で割ると、必要な夜勤実人員数は約71〜72人となります。

一方で、申し送りを「除外(なし)」とした場合、総夜勤時間数が増え、5440時間程度になります。すると、必要な人員数は75〜76人と増加してしまいます。このように、申し送りの取り扱い次第で、必要な人員数が大きく変動するため、管理方針の明確化が求められます。

このように、申し送りの扱いは病院全体の総夜勤時間と、夜勤の必要実人員数に大きく影響します。したがって、計上ルールを理解し、各医療機関で検討し、運用する必要があります。

夜勤時間帯の設定による影響と柔軟な調整

勤務時間帯の設定も、夜勤時間の計上に影響します。と言いますのは、医療機関の夜勤時間を16:30ではなく17:00に設定するだけでも、勤務実績表への計上結果が変わります。また、申し送りの有無を前提とした夜勤時間数の設定を調整すれば、同じ勤務時間でも夜勤時間として計上できる範囲を変えることが可能です。これにより、夜勤実人員数のコントロールや体制見直しのヒントにもなり得ます。こうした制度的な柔軟性を活かすためにも、現場の勤務実態を把握し、夜勤時間の設定や申し送り時間の取り扱いルールを再検討することが重要です。

勤務実績管理の効率化とEXCEL活用

勤務実績表を正しく作成し、かつミスなく運用するためには、EXCEL等を活用した「勤務実績計上一覧表」の作成が効果的です。

  • 日勤が8時〜16時のケース(申し送り、有or無)
  • 夜勤が21時〜翌9時のケース(申し送り、有or無)
  • 遅出勤務や早出勤務など変則的な勤務

などなど。それぞれ分類し、日勤時間と夜勤時間への計上時間を一覧化することで、いつ誰が見ても分かりやすいフォーマットが完成します。また、申し送りの有無や、職員による勤務形態(常勤・短時間・夜勤専従など)によってどう記載が変わるのかも、一覧表で明示しておくと現場全体の理解が深まり、記載ミスの防止にもつながります。

システム連携による省力化のすすめ

近年では、シフト情報と勤務実績表のデータをシステム連携させ、看護部長や管理職の負担を軽減する取り組みも広がっています。たとえば、シフト表から自動で勤務実績のデータが様式9へ反映されるシステムを導入している病院様も多くなっています。もちろん、夜勤時間として計上できない「会議」「委員会」「研修」などは、病棟勤務とは見なされませんので、適切に除外処理を行う必要があります。特に夜勤時間帯に該当する研修や会議などが発生した場合、それらは病棟夜勤時間(中段)から除外する一方で、総夜勤時間数(下段)には含めるという扱いになります。このような手間は依然として残っているようですが、こういったシステムを導入することで、人的ミスを減らしながら正確な実績記録が可能になります。

まとめ:勤務実績表作成のポイント

勤務実績表の正確な作成は、単なる記録にとどまらず、夜勤体制の評価や職員配置の適正化に直結する重要な業務です。

とくに、

  • 「夜勤72時間ルール」に基づく夜勤実人員数の調整
  • 夜勤専従者の導入可否の検討
  • 夜勤時間帯や申し送り時間の見直し
  • 勤務実績の計上一覧表を作成・把握
  • 会議・研修の除外時間の適正な管理

といった観点から、病棟ごとの勤務体制や職員の勤務実態をふまえた、柔軟かつ精度の高い管理が求められます。勤務実績の記録精度を高めるためには、一覧表による標準化やシステム連動による自動化の活用も非常に有効です。これにより、看護部長や管理担当者の負担を軽減しつつ、制度に適合した形での報告体制を整えることができます。