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1. 導入:小規模病院の進路を左右する「新たな加算」の登場
令和8年度の診療報酬改定に向けて、200床未満の小規模病院の経営戦略を根底から揺さぶる新たな評価軸が示されました。それが、包括期における充実した後方支援を評価する**「包括期充実体制加算」**の新設です。
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少子高齢化が加速し、地域医療の機能分化が厳格化される中、小規模病院には「中途半端な急性期維持」か、それとも「地域包括ケアへの完全特化」かという、冷徹なまでの二者択一が迫られています。本記事では、地域医療の要として生き残るための「ラストチャンス」とも言えるこの新設加算について、説明します。
2. ポイント1:対象は「200床未満」かつ「急性期を持たない」病院への明確な絞り込み
この加算の対象となる医療機関には、非常に明確な線引きがなされています。
- 病床規模: 許可病床数が200床未満であること。
- 病棟構成: 急性期一般入院料(急性期一般入院基本料)を算定する病棟を有しないこと。
- 算定対象: 「地域包括医療病棟」または「地域包括ケア病棟」に入院する患者であること。
政府が突きつける選択
なぜ「急性期を持たないこと」が絶対条件なのか。ここには、急性期病棟を維持しながら地域包括ケアも行うという中途半端な機能をやめ、地域包括医療・ケアへ完全にシフトせよという政府の強い意志、すなわち事実上の強い誘導が透けて見えます。中規模以上の病院との役割分担を鮮明にし、地域密着型病院の市場を再編・集約化する「フィルター」としての役割を、この加算が担っているのです。
3. ポイント2:「救急」と「後方支援」の二刀流が必須条件に
新設される「包括期充実体制加算」を算定するためには、単に「療養の場」として機能するだけでは不十分です。地域医療のハブとしての「攻めの姿勢」が具体的な実績として求められます。
具体的には、以下の2つの機能が評価の柱となります。
- 救急対応: 高齢者救急の自院受け入れ、および高度急性期病院等からの「下り搬送」を積極的に引き受ける体制。
- 地域連携: 在宅医療や介護保険施設等に対する、十分なバックアップ体制と実績。
この加算の核心部分は以下の通りです。
ここで注目すべきは、「急性期病棟を持たないにもかかわらず、救急受け入れを強く求められる」というパラドックスです。単なる入院待機場所としての運営を脱却し、救急から在宅までを繋ぐ「地域医療の結節点」としての機能を、高いレベルで実現することが算定の絶対条件となります。
4. ポイント3:最大の障壁は「入退院支援加算1」の取得か
今回の新設加算において、一部の病院にとってハードルとなるのが、施設基準に含まれる**「入退院支援加算1」の届け出**です。
200床未満で急性期病棟を持たない病院にとって、この基準のクリアは経営上の課題となり得ます。
- 極めて厳しい連携基準: 「連携医療機関25施設以上」かつ、それぞれに対して「年3回以上」の外部連携実績を維持しなければなりません。そもそも地域にこれだけの連携施設課あるかどうかという問題が存在します。
- 人的リソースへの先行投資: この膨大な連携業務をこなすには、ディカルソーシャルワーカー(MSW)や入退院支援スタッフの専従・専任配置が不可欠です。
5. 結論:令和8年度に向けた「決断」の時
今回新設される「包括期充実体制加算」は、国が描く「地域完結型医療」の理想像を具現化するための強力な武器です。今年、経営陣に求められているのは、現状維持の延長線上ではなく「決断」です。
- 貴院は、地域包括医療・ケアの絶対的拠点としての地位を確立しますか?
- それとも、この高いハードルを避け、別の生き残り戦略を模索しますか?
限られた時間の中で、自院の機能を再定義し、令和8年度に向けた具体的なロードマップを描き始めるべき刻が来ています。

