はじめに:自治体病院の経営状況に着目する背景

先日(2025年10月29日)の中医協の議論において、医療機関を取り巻く最新の経営状況が示されました。その中で特に深刻さが際立っていたのが「自治体病院」の経営状況です。

今回はそのデータをもとに、現在の病院経営がいかに危機的な状況にあるのかを解説します。

動画も配信しておりますので、よろしければご覧ください。

【出典】中医協:2025年10月29日「医療機関を取り巻く状況について」

自治体病院の9割が赤字!?(2023年度→2024年度)

以前からお伝えしておりますが、病院経営の現状を一言で表せば「医業収益の増加以上に、医業費用が増加している」という状況です。その結果、補助金等も含めた経常利益の平均値・中央値はいずれも低下しています。

2024年度において、自治体病院の85.9%が経常赤字となっています。

本業である医業利益だけで見ると、なんと95%の病院が赤字という凄まじい状況です。

具体的に1施設あたりで見ていくと、医業収益は約63億円から65億円に増加している一方で、医業費用は約70億円から74億円まで増加しています。その結果、医業利益は約9億円の赤字となっています。

自治体病院の場合、自治体からの繰り入れ金や補助金といった医業外収益があるため、最終的には経常利益で評価することになりますが、それを踏まえても2024年度時点で約5億円の赤字という状況です。

2025年度、つまり今年度については、さらに悪化している可能性が十分に考えられます。

病院類型別に見る経営状況

一般病院

一般病院では、2023年度から2024年度にかけて医業収益が69億円から71億円へと増加しています。一方で、医業費用は76億円から80億円へと増加しています。

その結果、医業利益は約9億3,000万円の赤字となり、繰り入れ金や補助金を含めた最終的な経常利益でも約5億円の赤字という状況です。

療養型病院

療養型病院では、医業利益はほぼ横ばいで、7億6,000万円から7億6,100万円とわずかな増加にとどまっています。一方、医業費用は10億4,000万円から10億9,000万円へと増加しています。

収益の伸びが0.1%程度にとどまる中で、費用が4%以上増加しているため、2024年度の医業利益は1施設あたり約3億円の赤字です。繰り入れ金や補助金を含めた経常利益でも、約1億円の赤字となっています。

精神科病院

精神科病院では、2023年度の医業収益が23億2,000万円、2024年度が23億5,000万円と約1.3%の増加となっています。一方、医業費用は29億円から30億円へと約5%増加しています。

その結果、2024年度の医業利益は約7億3,000万円の赤字です。繰り入れ金や補助金を含めた経常利益についても、2023年度は黒字で推移していたものの、2024年度は約1億2,000万円の赤字となっています。

地域分類別に見る自治体病院の経営状況

大都市型地域

大都市型地域では、医業収益が130億円から140億円へと約5.4%増加していますが、医業費用は140億円から150億円へと約7%増加しています。

その結果、2024年度の医業利益は約1億円の赤字となり、繰り入れ金や補助金を含めた経常利益でも約10億円の赤字となっています。

地方都市型地域

地方都市型地域では、医業収益が66億円から68億円へと約3.5%増加しています。一方、医業費用は73億円から77億円へと約5.8%増加しています。

2024年度の医業利益は約8億7,000万円の赤字経常利益でも約4億9,000万円、約5億円の赤字となっています。

人口少数地域型

人口少数地域型では、医業収益が29億円から30億円へと約2.3%増加していますが、医業費用は35億円から37億円へと約5%増加しています。

2024年度の医業利益は約7億4,000万円の赤字、繰り入れ金や補助金を含めた最終的な経常利益でも約3億2,000万円の赤字となっています。

なぜ自治体病院の経営はこれほどまでに苦しいのか

前述しましたが、自治体病院の医業利益、つまり本業のみで見た場合、2023年度ですら全体の92.5%が赤字でした。2024年度にはこれが95%にまで悪化しています。自治体病院では、繰り入れ金や補助金が入ることで、最終的な経常利益が算出されます。それを踏まえても、2023年度は赤字割合72.4%、2024年度は85.9%が経常赤字という結果です。

自治体病院は小児救急や産科といった不採算部門も担う必要があるため、もともと赤字が出やすい構造ではありますが、補助金が入ってもなお8割以上が赤字というのは、もはや経営努力だけで解決できる域を超えていると言わざるを得ません。

また、民間病院と比較しても自治体病院の悪化が著しい理由の一つに、「人事院勧告」に伴う人件費の影響があります。給与を民間水準に引き上げることを前提としているため、物価高騰に加えて人件費の負担が直撃しているのです。

経営形態を独立行政法人化するなどの見直しも議論されますが、現在の物価高騰は経営形態に関わらず全医療機関に直撃しており、形態を変えれば解決するという単純な問題ではありません。

一方で、一般病院においても医業黒字を確保している自治体病院が存在しており、2023年度で7%、2024年度でも4%存在している点は、非常に注目すべき点だと感じています。

診療報酬議論に対する個人的見解

現在の中医協の議論では、どの項目の点数を上げるかといった「診療報酬改定」の中身に焦点が当たっています。しかし、これほど物価や人件費が変動する中で、2年に一度の改定を待つ手法には限界があります。

私は個人的な意見として、診療報酬の単価である「1点=10円」そのものを、物価や経済情勢に合わせて変動させるべきではないかと考えています。

・全国一律である必要はなく、地域別や病院累計別で設定してもいい。

・「入院基本料を上げる・下げる」といった複雑な議論よりも、シンプルで即効性がある。

・2年待たずとも、リアルタイムな調整が可能になる。

現行のシステムでは、「評価(点数)を上げるためには、業務が増える」ことが多いです。

今は「収益を上げる努力しても、かかる経費(物価・光熱費・人件費)が上回ってしまう」ことが問題なのではないでしょうか。

もっとシンプルに、柔軟に対応できれば良いのに…と強く思います。

まとめ

一部では経営努力で黒字を出されている自治体病院もありますが、2024年度の時点でこれほど悲惨な数字が出ているということは、2025年度の状況はさらに悪化している可能性が高いでしょう。

こうした現状を踏まえ、医療機関の経営状況に対してどのように対応していくのかが、現在議論されている段階にあります。

医療崩壊を防ぐためには、これまでの診療報酬改定の枠組みを超えた、スピード感のある対応が求められています。国の動向を注視しつつ、現場の声を届けていく必要があります。

皆さんはこの現状をどう思われますか?

ぜひご意見をお聞かせください。