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はじめに:病床稼働率の計算方法、ご存知ですか?
皆さん、「病床稼働率」という言葉は日常的に耳にしますし、よく口にしていらっしゃるのではないでしょうか。しかし、そもそも病床稼働率はどのように計算するのか、正確に理解されている方は意外と少ないかもしれません。今回は、病床稼働率の計算方法について、基礎的な内容ですが改めて確認をしたいと思います。
まず病床稼働率の計算式を見ていき、計算式の中に出てくる用語を整理します。その上で実際に稼働率を計算してみます。混同されやすい「病床利用率」との違いも解説します。
動画も配信していますので、よろしければご覧ください。
病床稼働率の計算式と基本的な考え方
病床稼働率の計算式は、次のようになります。
「(在院患者延べ数+退院患者延べ数)÷(運用病床数×対象日数)×100」
一見すると、「在院患者延べ数」や「退院患者延べ数」といった見慣れない用語が並び、難しそうに感じるかもしれません。しかし、言葉の定義さえ整理してしまえば、計算自体はとてもシンプルで分かりやすいものです。
病床稼働率は、年単位でも月単位でも計算することができます。評価期間が異なるだけで、計算式の考え方そのものは同じです。例えば、月単位で計算する場合、その月が31日間であれば「31日」、年単位の場合は「365日」が「対象日数」になります。

用語の整理:「在院患者延べ数」と「退院患者延べ数」
計算式を正しく理解するために、まずは構成要素となる言葉の意味を整理します。
「在院患者延べ数」とは何か?
まず、分子に出てくる「在院患者延べ数」です。 これは単純に、対象期間(年間もしくは月間)における、毎日の24時時点の在院患者数を積み上げた数のことを指します。
例えば、ある日の24時(深夜0時)の時点で、その病棟に何人の患者さんが入院していたかを確認します。3病棟ある病院であれば、それぞれの病棟の24時時点の患者数を合算します。これを対象期間の毎日分、合計していったものが「在院患者延べ数」です。
「退院患者延べ数」がなぜ必要なのか?
次に重要なのが「退院患者延べ数」です。 ここが病床稼働率を計算する上での最大のポイントであり、後述する病床利用率との大きな違いになります。
通常、24時時点の在院患者数には、その日の日中に退院された患者さんの数は含まれていません。なぜなら、24時の時点ではもう病院にいらっしゃらないからです。
しかし、そのベッドはその日の日中、確かにその患者さんによって使用(稼働)されていました。 したがって、病床の「稼働」を正確に測るためには、24時時点の患者数に加えて、その日の日中に退院して帰られた患者さんの数を足し合わせる必要があります。
ただし、もし日帰り入院などで、入院したその日のうちに退院した場合などはカウントの仕方に注意が必要ですが、基本的には「24時時点の在院数」には含まれていない「退院数」を足す、と覚えておいてください。
病床稼働率を実際に計算してみる
言葉の整理ができたところで、実際に稼働率を計算してみましょう。
具体的な数字で計算してみます。

病床数40床、31日間の月を想定します。
→ 分母:40床×31日=1,240床
24時時点の在院患者延べ数が1,043人、退院患者数の合計が73人だったとします。
→ 分子:1,043人+73人=1,116人
この病棟の病床稼働率は90%となります。
これが1病棟だけでなく、3病棟、5病棟、あるいは7病棟と病院全体で計算する場合でも、基本的な考え方は全く同じです。各病棟の数値を合算して計算式に当てはめるだけです。
病床利用率との違い
病床稼働率とよく混同される「病床利用率」について説明します。言葉は似ていますが、分子の部分が違います。
病床利用率の計算式は「在院患者延べ数÷(運用病床数×対象日数)×100」です。稼働率と違って、退院患者延べ数を足しません。


先ほどと同じ数字で計算すると、
分子:1,043人(退院患者数を足さない)
病床利用率=1,043÷1,240×100=約84%
稼働率90%に対し利用率84%。同じ数字を見ているのに6%もの差が生じます。
病床稼働率と病床利用率が示す病棟の実態
病床稼働率と病床利用率は、同じ「ベッドの埋まり具合」を示すように見えても、実際に捉えている“実態”が異なります。
病床稼働率は、同じ日に入退院が発生した場合、たとえ同一の病床であっても「入院した患者」と「退院した患者」をそれぞれ計上するため、結果として2人分としてカウントされます。そのため、入退院の回転が非常に速い急性期病院などでは、集計のタイミングや計算方法によっては病床稼働率が100%を超える現象が起こり得ます。これは、単にベッドが埋まっているかどうかだけでなく、入退院対応を含めた業務量や現場の“動き”を反映しやすい指標であると言えます。
一方で病床利用率は、24時時点の在院患者数を基準に算出するため、日中に入退院が多い病棟であっても、その分の動きが数値に反映されにくい特徴があります。つまり、実際には入退院対応が多く業務負担が大きいにもかかわらず、指標上はそれが見えづらくなる場合があります。**しかし利用率には、特定の時点(24時時点)における在院状況をシンプルに示せるという強みがあり、病院間・年度間の比較や、全体の受け入れ余力(“夜間時点でどれだけ埋まっているか”)を把握する目的では扱いやすい指標です。**また、入退院の回転によるブレを受けにくいため、病床数の適正規模や構造的な過不足(許可病床に対して実際に使えているか)を議論する場面でも有用です。
このように、稼働率は“回転”を含む実態(業務量)を捉えやすく、利用率は“ある時点の在院状況”を捉える指標であるため、目的に応じて使い分けることが重要です。また、同じ言葉でも、病院や資料によって分母が「許可病床」なのか「稼働病床」なのかが異なります。そのため、資料に出すときは 「(分母:稼働病床/許可病床)」を必ず明記することで、指標が明確化します。
この「稼働率と利用率の差」に着目することも、マネジメント上とても有意義です。
「この病棟は常に35人くらいの患者さんがいるな(利用率は一定だな)」と思っていても、実はその内訳を見ると、毎日5人、7人と入れ替わっていての35人なのかもしれません。 平均在院患者数だけを見ていると、この「入れ替わりの激しさ」という実態が見えにくくなります。
実際に入院している患者さんの数が少なく見えても(利用率が低くても)、入退院が多ければ、書類作成や説明業務、ベッドメイクなどの業務負担は非常に大きくなります。 稼働率と利用率の両方を把握しながら見ることで、「数字上は患者数が少ないのに、なぜ現場はこんなに忙しいのか?」といった疑問への解像度が上がり、より実態をイメージしやすくなるでしょう。
一般的な稼働率水準の考え方
一般的な目安としては、急性期病院では85%以上を目指すケースが多いと考えられます。 さらに効率的に運営されている病院様では、90%を超えているところも珍しくありません。ベッドコントロールが円滑に行われ、経営効率が良い状態と言えます。
一方、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟などでは、急性期と比べて患者の回転が少ないため、利用率でも90%から95%以上という高い水準で維持されている病院様も見受けられます。
現在の病院経営を取り巻く環境を鑑みると、稼働率や利用率の目標を達成することは重要な指標となるでしょう。
まとめ
本日は、病床稼働率と病床利用率の計算方法の違い、そしてそこから読み取れる現場の実態についてご説明しました。
・病床稼働率:現場の動き(入退院)を反映しやすい。
・病床利用率:24時時点の在院患者数のみを見ている。
言葉は似ていますが、計算式に含まれる意味合いは大きく異なります。 ぜひ、ご自身の病院で使われている数字がどちらの定義に基づいているのかを確認し、共通言語として活用してみてください。そうすることで、単なる数字の管理だけでなく、現場の忙しさへの配慮や、より適切なベッドコントロールにつながっていくはずです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

