本日は、夜間急性期看護配置加算について説明いたします。動画も公開していますので、是非、ご覧ください。
夜勤帯の人員配置をどの程度手厚くするかは、患者の安全だけでなく看護師の負担軽減にも大きく影響します。そんな夜間帯の看護体制を評価する仕組みとして注目されているのが「看護職員夜間配置加算」です。本記事では、急性期病棟における夜間配置加算の概要や点数区分、加算1と2の違い、具体的な施設基準、そして夜勤業務を支えるICT・AIの活用事例まで幅広く解説します。看護師不足や長時間労働が懸念される医療現場だからこそ、適切な人員配置を行い、患者と看護師双方にとって安全で安心な環境づくりを進めることが重要です。夜勤体制の最適化を目指す病院や医療従事者の方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。
Contents
看護職員夜間配置加算とは
看護職員夜間配置加算は、夜勤時間帯でも安全性の高い医療の継続と看護師の負担軽減のために、夜勤帯の看護職員数を手厚く配置している病院を評価する仕組みです。日中よりも人員が少なくなりがちな夜間は、急変対応や転倒・転落などリスクが高まりやすい時間帯でもあります。そこで、この加算を算定することで、
- 夜間の安全性向上
- 看護師の負担軽減と定着率向上
- 高齢化や重症度上昇が進む患者への質の高いケアの維持
といったメリットを得ることが期待されています。加算を取得するには、病院や病棟が一定の要件を満たしたうえで届け出を行い、適切な運用管理を続ける必要があります。
点数区分と施設基準
点数区分(急性期一般入院基本料の場合)
急性期病棟で夜勤を実施する場合、下記の区分で点数が設定されています。いずれも「患者が入院した日から14日間」を限度に所定点数に上乗せできる仕組みです。
ただし「急性期一般入院基本料1」を届け出ている病棟の場合、16対1加算2(45点)は届出不可となります。そのため、急性期一般入院基本料1の病棟が届け出られるのは12対1の加算1・2か、16対1加算1のみとなります。
施設基準の共通要件
看護職員夜間配置加算には、全区分に共通する施設基準があります。大まかに整理すると以下のとおりです。
加算1と加算2の違い:看護業務の負担軽減要件
夜勤に従事する看護師の負担軽減に資する体制に力を入れているかどうかによって、加算1と加算2のどちらを届け出るかが変わってきます。加算1を算定するには次に掲げる項目のうち、「ア」または「ウ」を含む4項目以上を満たす必要があります(その際、「コ」も満たすことが望ましいとされています)。
夜勤は身体的・精神的負担が大きいため、インターバルを十分に取る工夫や、連続夜勤を最小限に抑える仕組みが働き方改革の視点でも注目されています。また、院内保育所の拡充やICTによる業務効率化など、多角的な対策を進めることで看護師確保や離職防止にもつながります。
注意すべき解釈
夜勤配置「12対1」「16対1」の考え方
原則として各病棟3人以上配置
看護職員夜間配置加算を届け出る場合、夜勤帯に「3人以上の看護職員」を配置することが絶対条件となります。病棟の患者数が少ない日でも、最低3人を割ることは認められません。
例えば、
- A病棟:患者数28名
- B病棟:患者数45名
という状況であっても、A病棟を2人体制、B病棟を4人体制にする「傾斜配置」は不可です。夜勤看護師が3人未満になる病棟が生じないようにする必要があります。
毎日12対1または16対1を満たすこと
さらに、夜勤帯の患者数に対して12対1または16対1を必ず充足する必要があります。ここで重要なのは「毎日満たせているか」がチェックされる点です。例えばある日だけ患者数が急増し、夜勤配置人数が不足すると、適時調査で不備を指摘されかねません。歴月(1か月)単位で平均が基準以上であっても、1日でも基準を下回れば問題となるのが夜間配置加算の厳しい部分です。
様式9の2での管理
夜勤帯の配置状況を確認するために「様式9の2(式9の2)」を毎日作成します。勤務帯ごとの最大患者数と看護配置人数を記載し、患者数に対し、12対1・16対1を割り込んでいないかを証拠として残します。一時的に患者数が増えた場合でも、速やかに人員を増やすか転棟を調整するなど対策を取り、基準を割らない運用が求められます。
ICT・AI・IoT活用による夜勤負担軽減の例
先述した「コ」の要件にも関わりますが、近年の夜勤負担軽減策として注目されるのが、ICTやAI、IoTを活用した業務効率化です。例えば以下のような事例があります。
- 音声入力システムの導入
看護記録を書く際にキーボードではなく音声入力を用いることで、入力時間を短縮する試みです。ただし会話や雑音を拾いすぎて手直しに時間がかかるケースもあり、病院によって評価が分かれています。 - バイタルサインの自動記録
ウェアラブルセンサーや監視モニターから電子カルテへ自動的にデータが飛ばせるシステムを導入し、手書きやダブルチェックによる手間を減らす。夜間の巡視がやや軽減されるという声もある一方、設定・維持管理コストが課題となる場合も。 - AIを用いたリスクアセスメント
バイタルデータや患者情報をAIが解析し、危険度の高い患者や転倒リスクを自動的にアラート表示する仕組み。夜勤帯の看護師が限られた人員で効率よく巡視するのに役立つ可能性があるようです。
いずれも、機器やシステムを導入しただけでは本当に負担軽減につながらないことも少なくありません。そのため、「年1回以上の効果測定と見直し」を行い、使い勝手や導入コストの面から導入後の実態をしっかり検証することが求められています。
適時調査で指摘されやすいポイント
看護職員夜間配置加算を取得するうえで、適時調査では下記のような点がよく確認されます。書類不備や管理体制の不足が発覚すると、加算の返還や減算を指摘される可能性があるため要注意です。
- 様式9の2と実際の勤務表の不一致
1日でも看護師が足りていなかった実績があれば問題視されます。 - 各病棟3人体制が守られていないケース
夜勤帯に欠員が出た際に、他病棟へ応援に行きすぎて実質2人以下になった場合などは要注意です。 - 「ア・ウ」などインターバルや夜勤連続回数を守れていない
インターバル11時間や連続夜勤回数の上限を満たす計画でも、現場のシフト実績と乖離していれば指摘されます。 - ICT導入効果の評価不足
AIや音声入力などを導入しているものの、実際には負担軽減されているかを評価・見直ししていない病棟は不備とみなされる恐れがあります。 - 夜勤後の休日確保
「エ」の夜勤後休日確保は、暦日換算で休日を設ける必要があります。たとえば翌日が完全にオフでなければ、休日確保とみなされないケースがあります。
まとめ
看護職員夜間配置加算は、夜勤帯の看護師配置を手厚くすることで、患者安全やスタッフの働きやすさを高めるための重要な加算です。12対1、16対1といった人数基準を満たしつつ、さらに加算1の要件となる「夜勤負担軽減項目(ア~コ)」を複数満たすことで、組織全体の負担を抑えた運営ができます。ただし、そのためには以下のポイントをしっかり管理する必要があります。
- 各病棟ごとの夜勤人員(最低3名)と患者数の確認
- インターバルや連続夜勤回数など働き方改革に関する項目の実績
- ICT・AI・IoTなどの導入効果を客観的に評価し、年1回以上見直す体制
- 様式9の2を用いた毎日の配置管理と適時調査での整合性チェック
夜勤帯が多い急性期病棟だからこそ、現場の声を反映しながら持続可能な体制を整えることが大切です。2026年にはさらなる診療報酬改定が予定されており、夜間配置の評価基準やICT活用要件が見直される可能性もあります。常に最新情報をウォッチしつつ、看護師と患者の両方に優しい看護体制の構築の推進が望まれますね。