はじめに

本記事は、2026年の診療報酬改定で新設された「看護・多職種協働加算」の計算方法につきまして、実際の計算例を挙げて解説いたします。特に、多くの医療機関の皆様が、毎月の締め作業で日々悪戦苦闘されている「様式9」への落とし込みという観点からご説明をしてまいります。

 

現在、多くの病院様がこの新設された加算を自院で届け出るべきか否か、経営的な視点も含めてシミュレーションを行っていらっしゃることと存じます。しかし、いざ算定しようとすると、正確な時間数や配置人数の把握は非常に難しく、様式9にどう反映されるのかイメージが湧かないというお声もよく耳にします。

そこで本記事では、厚生労働省から提示されている資料の読み解きから、エクセルを用いた具体的な計算手順、そして実務上最も注意しなければならない「他の加算との重複による落とし穴」まで、順を追って解説してまいります。

 

動画も配信しております。よろしければご覧ください。

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001667218.pdf

 

すべての計算の大前提!厚生労働省の資料「別紙5」の確認

今回、診療報酬改定に伴って厚生労働省から提示されております資料の中に、「別紙5 看護要員等の算出方法および配置状況例」というものがございます。

この別紙5の資料の中に「看護・多職種協働加算」の計算に関する欄が追加されております。様式9を作成し、加算の計算を行う上では、この資料に記されている算出方法が絶対的なルールとなりますので、まずはこの資料の存在をしっかりと頭に入れておいてください。

それでは、具体的な計算のシミュレーションに入っていきましょう。

看護・多職種協働加算を届け出る場合、大前提として、原則となる元の看護配置基準が「10対1」となっている必要があります。この「ベースとなる10対1の配置」に対して、どれだけの多職種配置時間を上乗せしていくのか、という考え方が今回の加算の基本構造となります。

様式9の中で、該当する「入院患者の数および看護要員の数」という一番上の部分に着目してください。ここで計算の起点となるのが、「1日平均入院患者数」のA欄です。この平均患者数に対して、まずはしっかりと10対1の配置基準を満たさなければなりません。

なお、この1日平均入院患者数というのは、直近の過去1年間、毎月計算をして算出している平均の数字となりますので、この1年間の平均値が様式9に記載されることになります。この数字をもとに必要な看護配置基準が算出され、自院の実際の実績値がそれを上回っているかどうかを毎月厳格に見ていくことになります。

 

シミュレーション1:基本となる10対1配置の必要時間数を計算しよう

では、具体的に「1日平均入院患者数が100人」であったと仮定して、必要となる時間数と人数を計算してみましょう。手順を一つずつ追っていきます。

 

手順1:平均患者数を配置基準で割る

 まず、平均患者数である100人を、配置基準の「10」で割ります。

 100人 ÷ 10 = 10人

 この「10人」というのが、病棟で常時必要な看護師人数ということになります。

手順2:3勤務体制を掛け合わせる

 次に、この常時必要な人数「10人」に対して、3勤務帯(日勤・準夜勤・深夜勤の3交代制など)を掛け合わせます。

 10人 × 3 = 30人

 この計算により、1日あたりの看護職員配置人数として「30人」という基準値が算出されます。

手順3:月間の必要時間数に換算する

 次に、この30人を月間の「必要時間数」に換算していきます。算出された30人に、1日の基本勤務時間である8時間と、その月の月数(ここでは31日間とします)を掛けます。

 30人 × 8時間 × 31日 = 7,440時間

 以上の計算から、平均患者数100人の場合、10対1配置を満たすための基準値となる必要時間数は「7,440時間」となります。これが10対1配置において月間で必要となる基準時間数です。対象月が30日や28日の月であれば、その月の日数をかけていただく形になります。

【補足】

実務上は100人ぴったりというような数字にならないことの方が多いかと思います。最近のコンサルティングでのシミュレーションで「平均患者数108人」という数字で計算される病院様がいらっしゃったため、計算例に108人の場合の試算を入れております。この場合も計算の流れは全く同じです。

108人を10で割ると10.8人となります。そこに3勤務帯を掛けて、10.8 × 3 = 32.4人となりますが、様式9のルールとして人数の計算における数値は「切り上げ計算」となります。したがって、32.4人は「33人」に切り上げられることになります。

この切り上げられた33人に対して、8時間と月の月数(例えば31日)を掛けて必要時間数を出す、という仕組みになります。

小数点以下の端数が出た際の切り上げルールはしっかりと覚えておいてください。

 

シミュレーション2:今回の主役「看護・多職種協働加算(プラス25対1)」の必要時間数

さて、ここからが今回の診療報酬改定の最大の肝となる部分です。看護・多職種協働加算を届け出るためには、先ほど算出した「もともとの10対1配置」に加えて、「プラス25対1」の配置がされていることを基準値として満たしている必要があります。つまり、10対1配置の基準値と、25対1配置の基準値の「合算値」が、クリアしなければならない新たなハードルとなるわけです。

では、この追加で必要となる「25対1配置」の計算を行ってみましょう。計算式も基本的には10対1と全く同じ構造になっています。先ほどと同じく、平均患者数100人、月数31日で計算してみます。

 

手順1:平均患者数を基準で割る

 今回は「25対1」の配置ですので、平均患者数100人を25で割ります。

 100人 ÷ 25 = 4人

手順2:3勤務体制を掛け合わせる

 これに3勤務体制を掛けます。

 4人 × 3 = 12人

手順3:月間の必要時間数に換算する

 算出された必要人数12人に対して、8時間と31日間を掛けます。

 12人 × 8時間 × 31日 = 2,976時間

 これにより、追加で必要となる時間数は「2,976時間」であることが分かりました。

総必要時間数と現状の実績ギャップを分析する

これで2つの基準値が揃いました。これらを合計して、全体のハードルを確認してみましょう。

 ・10対1配置の必要時間数:7,440時間

 ・追加となる25対1配置の必要時間数:2,976時間

 ・合計:10,416時間

つまり、看護・多職種協働加算を算定するためには、トータルで「10,416時間」の看護職員等の配置が必要になるということです。人数でみても同じです。10対1配置に必要な30人と、25対1配置に必要な12人を足して、合計42人分が必要になるという考え方になります。もともとの10対1配置を満たしているだけでは当然足りず、それに加えて25対1配置相当の時間も確実に満たしている必要があるのです。

ここで、自院の実績値と照らし合わせてみましょう。仮に、現在の実績値として「10,000時間」の配置が確保できていたとします。10,000時間配置している場合、看護職員配置数としては様式9の自動計算で約41人という数字になります。

必要時間数である10,416時間に対して、実績が10,000時間しかありませんので、単純に引き算をするとどうなるでしょうか。

 10,416時間 – 10,000時間 = 416時間

「416時間」が不足していることが判明します。この不足分をどう解消するかが、病院様にとっての大きな経営課題となります。

考えられる対策としては、シンプルに看護配置の時間をさらに増やすか、あるいは本加算の創設趣旨でもある「看護師不足を補うための多職種協働」を活用し、多職種配置の時間を確保して、この416時間を埋めなければなりません。

多職種の配置時間をいかに戦略的に確保していくかという視点が、加算取得のための大きなポイントになってきます。

 

【要注意】みなし看護補助者と重複する場合

ここで、重要な注意点をお伝えいたします。

看護・多職種協働加算を届け出る場合、「急性期看護補助体制加算」における「みなし看護補助者」の取り扱いが大きく変わります。ここを見落としてしまうと、後で大変なことになりかねません。

 

従来、急性期看護補助体制加算を届け出ている場合、看護職員の「余剰時間」を「みなし看護補助者」として計上することが可能でした。つまり、看護師として配置されている余剰分を、看護補助者の代わりとしてカウントできていたわけです。

先ほどの例で振り返ってみましょう。従来の10対1配置のみであれば、必要時間数は7,440時間でした。これに対して実績が10,000時間あった場合、 10,000時間 – 7,440時間 = 2,560時間 この「2,560時間」が丸々余剰時間となり、そのまま「みなし看護補助者」の時間数として計上できていたのです。

しかし、今後、看護・多職種協働加算を算定する場合には、この余剰時間を多職種配置時間に計上することになります。

 

ここで非常に厄介なルールが存在します。それは「看護・多職種協働加算と、急性期看護補助体制加算のみなし看護補助者は重複して計上することができない」という厳しい制約です。

先ほどの計算例でのシミュレーションを見てみましょう。

急性期看護補助体制加算(25対1)を満たすためには、先ほどの計算と同じく「2,976時間」の看護補助者の配置が必要です。ここで、仮にこの病院様の「看護補助者のみ」の月延べ勤務時間数の合計が「2,000時間」しかなかったとします。(便宜上、看護補助者のみの月の夜勤時間数はゼロと仮定します)。

2,976時間必要なところ、2,000時間しかないため、976時間が不足しています。月平均の配置人数で言うと、12人必要なところ8人しかおらず、不足している状態です。

これまではどう乗り切っていたかと言うと、先ほどの看護職員の余剰時間「2,560時間」の中から、不足している「976時間」分を「みなし看護補助者」として補填することで、要件をクリアしていました。

しかし、看護・多職種協働加算を届け出ると状況が一変します。

 

 

新しい計算式では、看護・多職種協働加算での必要時間数が「10,416時間」へと跳ね上がります実績の10,000時間から、新たな必要時間数10,416時間を引くと、すでに416時間が不足している状態です。新しいルールでは、月平均のみなし看護補助者配置数は「N – P」という計算式で表され、実績値に対して必要時間数を差し引いた上で、さらに余剰がある場合にのみ計上できる仕組みになります。

つまり、看護職員の余剰人数の部分は多職種配置で完全に使い切ってしまい、さらに不足まで起こしているため、「みなし看護補助者」として回せる余剰時間が全くなくなってしまうのです。

その結果どうなるか。急性期看護補助体制加算で必要だった2,976時間を、純粋な看護補助者の2,000時間だけで賄わなければならず、要件を満たすことができなくなります。これはすなわち、看護・多職種協働加算を届け出ることで、逆に急性期看護補助体制加算の引き下げ(ダウングレード)が生じる、あるいは最悪の場合、算定できなくなる可能性があるということを意味しています。新たな加算を取ろうとして、これまで取れていた別の大きな加算を落としてしまう可能性がありますので、この点にはくれぐれもご注意ください。

 

現在の様式9を活用した簡便なシミュレーション方法

最後に、日々の業務でお忙しい皆様の計算作業を少しでも楽にするための、様式9の活用法について触れておきます。

現在、皆様のお手元にある様式9のエクセルファイルは、まだ多職種配置の新しい書式に対応していないものが多く、一から手計算するのは非常に難しいと感じていらっしゃる方も多いかもしれません。しかし、ご安心ください。考え方は非常にシンプルです。

様式9を見ていきますと、「月平均の1日あたりの看護補助者配置数」が書かれている部分があります・

 

もし現在、25対1の急性期看護補助体制加算を届け出ている場合、そこにはすでに25対1の計算式が組み込まれており、自動的に必要時間数(今回の例での2,976時間にあたる数字)が算出されて表示されているはずです。

その表示されている数字と、上部で計算される従来の10対1の必要時間数(今回の例での7,440時間)を単純に足し合わせていただければ、現時点で多職種配置において必要な総時間数(10,416時間)を算出することができます。

もし、現在25対1の急性期看護補助体制加算を届け出ていない病院様であっても、様式9上で一時的にその届け出をしている設定に切り替えてみてください。多くの様式9では自動計算が働く仕様になっているかと思いますので、これにより10対1の配置時間に加えて、さらに多職種配置で必要な時間数が自動計算されます。まずはこの方法で、現時点での自院の必要時間数を素早く把握し、シミュレーションの第一歩を踏み出していただければと思います。

おわりに

本記事では、2026年診療報酬改定における看護・多職種協働加算の計算方法と様式9の見方、そして他の加算との兼ね合いによる注意点について解説をさせていただきました。

現在、この加算の届出に向けて、各病院様でシミュレーションを重ねていらっしゃることと存じます。計算式としては本日お示ししたような形となります。単一の加算の基準を満たすかどうかだけを見るのではなく、急性期看護補助体制加算への影響も含め、病院全体の配置状況を俯瞰しながらご検討を進めていただければと思います。

 

本記事が少しでも参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。