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はじめに
本記事は、「基礎からわかる!診療報酬のしくみ」と題して、診療報酬の基礎的なところをご説明させていただきたいと思います。

診療報酬という言葉を聞くと、「非常に難しい制度のお話」と感じる方も多いのかなと思いますが、医療の世界で働いていると、あるいは医療に関心を持っていると、必ず一度は耳にする言葉でもあります。細かな算定要件や数年ごとに行われる改定内容のすべてを一度に理解するのは容易ではありませんが、少しずつ慣れていっていただくための、本当に基本の「キ」の部分をお伝えできればと思います。
今回は、いきなり専門的な細かい話に飛び込むのではなく、診療報酬とは何なのか、どのようなルールで動いているのかという全体像と大原則について解説していきます。
医療事務の方はもちろん、医師、看護師、リハビリ専門職の皆様、そして医療経営に携わるすべての方の参考になれば幸いです。
動画も配信しておりますので、よろしければご覧ください。
医療の二つの形:「保険診療」と「自由診療」
まず、診療報酬のしくみを理解するための第一歩としてお伝えしたいのは、私たちが日々提供している医療は、大きく分けて「保険診療」と「自由診療」というものに分けられるということです。この二つの違いを正しく理解することが、すべてのルールの土台となります。

皆さん、この「自由診療」という言葉、聞いたことがあるかと思います。自由診療というのは、正常分娩や、美容整形、あとは一部の予防接種など、保険が利かない全額が患者さんの自己負担になるものとなります。医療機関側が価格を自由に設定できるため、受ける施設によって金額が異なるのも特徴です。
これに対して、「保険診療」というものが、患者さんが健康保険証を使って受けることができる医療となります。私は病院経営コンサルタントですので、今回は病院を前提として考えていきますが、病院が普段行っている業務のほとんどは、この保険診療に当たります。外来で診察を受ける、入院する、検査をする、処置を受ける、手術を受ける、リハビリを行うなど、こうした日常的な医療サービスの多くは、保険診療の枠組みの中で提供されています。
この保険診療について国が定めているものとして、診療報酬点数という共通のメニュー表と、あとは価格表というものがあり、全国どこでも同じ金額ということになります。
つまり、今回ご説明をさせていただく診療報酬というのは、保険診療を行うサービスのルールのことになります。
医療の大原則:「混合診療の禁止」とその理由
そして、保険診療を行うにあたって、大原則といたしましては、「自由診療との混合診療の禁止」というルールがあります。

一つの病気に対して、保険診療と自由診療の2つを同時に混ぜて使ってはいけません。もし混ぜて使ってしまうと、本来は保険証を出して一定金額、1割から3割の自己負担で受けられるはずの医療サービスが、すべて自由診療扱いとなってしまい、全額自己負担になってしまいます。
なぜこのような厳しいルールがあるのかといいますと、お金がある人だけが特別な治療を受けられるという不平等を防ぐためというのと、保険外の治療を勧められて患者さんの負担が無限に膨れ上がるということを防ぐため、そして安全性を担保するために、このようなルールがあると言われております。
医療は、人の命や生活に直結するものです。そのため、単に患者さんが希望しているから、あるいは医療機関が提供したいからという理由だけで、自由に保険診療と自由診療を組み合わせてよいわけではありません。公平性、安全性、患者負担の保護という観点から、厳格なルールが設けられているのです。
例外としてのルール「保険外併用療養費」
しかし、ここで疑問が湧く方もいらっしゃるかもしれません。病院の個室代というのは自費になりますね。「入院そのものは保険診療として計算されているのに、個室代を自費で取っているのは混合診療ではないのか?」と思われるかもしれません。

こういった、患者さんの快適さや利便性に関わる一部のものだけは、保険診療に組み合わせても良いルールのことを「保険外併用療養費」と言います。難しい言葉が出てきてしまいましたが、例外として保険適用の医療サービス等と組み合わせて使うことが可能になっています。
この保険外併用療養費というのは、「選定療養費」と「評価療養費」という2つに分かれています。

ここでいう選定療養費というのは、先ほどの差額ベッド代ですとか、あと最近、大学病院ですとか大病院を紹介状なしに直接受診した場合など、初診時にかかる7,700円などは、この選定療養費というものに該当します。医療の本質的な治療部分というよりは、患者さんの個人的な選択やサービス面での選択肢と言えます。
一方、評価療養費というのは、先進医療を受けるときですとか、治験中の薬など、将来的に保険適用にするか評価中の新しい医療を受けている内容になります。
これらも例外として、ベースの治療、例えば入院費ですとかそういったものは保険適用となりつつ、特別な評価療養費の部分は自費で組み合わせることが認められています。
診療報酬とは何か:メニューと価格表、そして病院経営の要
さて、今回のお話の中心に診療報酬というものがありますが、この診療報酬というのは、保険診療で行う医療サービスのメニューと価格表というものになります。もちろん、すごく細かい色々なルールがありますけれども、それらも踏まえまして、行った医療に対してこの金額を患者さんに請求するための細かいルールが決められている内容となります。
そして、もう一つの特徴としては、この診療報酬が医療機関の最大の収入源であるということです。
この保険診療を行い、診療報酬を請求し、そこから入ってくるのが医療機関の収入源ですので、この診療報酬を正しく請求し、収入として病院が得るということが、病院経営上とても重要になってくるため、診療報酬改定というものがあるたびに、病院全体がザワザワし、対応に追われるということになります。
点数が変わる、施設基準が変わる、算定要件が変わる。それによって、同じ医療を提供していても、得られる収入が変わる可能性があります。逆に言えば、必要な条件を満たしているのに請求できていなければ、本来得られるはずの収入を失っていることになります。
価格は金額ではなく「点数」で表示される
この診療報酬における医療サービスの価格というのは、すべて点数で表示されており、金額で表示はされていません。

1点、2点、3点などのように点数で表示されておりまして、この1点は一律10円ということになります。そのため、診療報酬の点数に10をかけると金額に換算することができます。たとえば、300点と定められた医療行為の場合は、10をかけて3,000円となりますし、5,000点の手術であれば50,000円となります。
病院で普段行われている医療サービス等が、このような形で点数が定められており、それらを計算して患者さんに請求し、そして病院の収入に変わっていくという仕組みになっています。
診療報酬点数表を構成する2つの柱
診療報酬点数表は、大雑把にですけれども、2つの柱に分けられます。

まず一つが「基本診療料」といいまして、病院の場所代や基本的な看護のベースとなる、初・再診料や入院基本料などがこれらに該当します。具体的な検査や手術を何もしなかったとしても、医師が診察を行ったり、患者さんがベッドに寝て看護を受けたりすることで必ず発生する基本的な料金となります。
その他に、「特掲診療料」というものもありまして、患者さんの状態に合わせて行った分だけ追加で算定されるような、オプションのようなものになっていまして、手術、検査、処置、注射、あとはリハビリですとか、そういったところなどは特掲診療料というところに分類されます。基本診療料というしっかりとした土台の上に、患者さんに必要に応じて行った個別の医療行為がオプションとして積み重なっていくイメージです。
絶対に守らなければいけないルールブック「療養担当規則」
保険診療を行う上で、もう一つ絶対に守らなければいけないルールブックとして「療養担当規則」というものがあります。正式には、「保険医療機関および保険医療養担当規則」というもので、通称「療担規則」と呼ばれているのですが、いわゆる保険診療のルールブックのようなものとなっております。

妥当で適切な診療を行うことですとか、適正な請求を行うことですとか、あとはカルテや看護記録を正しく記載することなどが、こういった療担規則で厳格に定められています。
診療報酬は、単に点数を知っていればよいというものではありません。実際にその医療行為を行ったこと、その必要性があること、記録上も確認できることが重要です。どれだけ現場で一生懸命対応していても、記録が不十分であれば、請求の妥当性を説明できないことがあります。記録は単なる業務の後始末ではなく、患者さんに対して適切な医療を提供した証拠であり、病院が正しく診療報酬を請求するための根拠でもあります。
こういった細かいメニュー表と価格表の診療報酬と療担規則などに則って、我々は医療提供を行い、患者様に請求をし、そして病院の収入として診療報酬が入ってくるというような構造になっています。
保険診療のお金の流れ:厳格な審査を経て収入へ
そして保険請求の流れといたしましては、まず患者さんは窓口で1割から3割を病院に支払い、その後で病院はレセプト請求を審査支払機関に提出、請求をします。そしてこの後で、審査支払機関と保険者の間で支払いが完了し、この審査支払機関から病院に診療報酬が支払われるということになります。

この支払いの流れに関して重要なのは、審査支払機関に請求をする段階で、厳格な審査が行われているということです。
妥当性のある請求ではないと判断された場合、請求したものそのものは支払われない、差し返されるというようなことがあります。病名に対して検査が医学的に妥当か、算定要件を満たしているかなどが細かく確認されます。
差し返されたその請求を再度病院内で確認し、妥当性を示す証拠をつけて再度提出するなどを繰り返すことはもちろん可能ではありますが、請求に関してはこの厳格な審査を通って行われるということだけ押さえておいていただければと思います。つまり、診療報酬は「やったから請求できる」ものではなく、「ルールを満たし、記録として説明できるから請求できる」ものなのです。
おわりに:診療報酬は現場と経営をつなぐ架け橋
少し難しい話でしたので、今回はここまでにしたいと思います。
診療報酬は、医事課や事務員だけのものではありません。医師、看護師、リハビリ職、薬剤師、栄養士、事務職など、医療に関わる全ての職種が、日々の業務の中で診療報酬とつながっています。
現場で働く一人ひとりが、診療報酬の全てを専門的に理解する必要はありません。ただ、自分たちの業務が診療報酬とつながっていること、記録や算定要件が医療機関の収入に関わっていることを知っておくことは、とても大切です。
患者さんに不利益を与えないこと、医療機関として適正な請求を行うこと、そして必要な医療を継続して提供できる経営基盤を守ることに直結します。診療報酬は、現場の医療提供と病院経営とを結ぶ、まさに要の仕組みです。
基礎の「キ」をしっかり押さえておくだけでも、日々の業務の見え方がぐっと変わってくるはずです。
本日の内容が皆さまの参考になれば幸いです。

