はじめに:本日のテーマと全体像

今回は、短期滞在手術等基本料の改定の方向性についてお話しします。

具体的には、「これまで入院で行われてきた短期滞在手術を、外来へシフトしていきたい」という流れと、その動きが今後さらに加速する可能性がある、という点が主なテーマです。

複数のデータを踏まえた結果、いくつかの課題が明確になり、それを受けて今後の算定方法や点数設定の見直しが検討されている、という流れになります。

動画も配信しておりますので、よろしければご覧ください。

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001591981.pdf

はじめに:短期滞在手術等基本料をめぐる現状認識

まず現状として、短期滞在手術等の算定方法には、入院料や病院機能の違いによって複数の算定方法が混在しています。

特に大腸ポリペクトミー眼内レンズ挿入術においては、入院で実施した場合の点数が外来で実施した場合よりも高いという状況が確認されています。

また、これらの手術を外来で全く実施していない、つまり入院外実施率が0%の医療機関が一定数存在している点も、データとして示されています。

算定方法が複数存在しているという課題

短期滞在手術等基本料には、外来で算定される基本料1と、入院で算定される基本料3があります。

短期滞在手術等基本料1

日帰りで、外来にて対象手術を実施した場合に算定可能ですが、届出を行っている医療機関のみ算定可能です。外来でこちらの短期滞在手術等基本料1の対象手術を行った場合、届出をしている病院はこちらで算定、届出をしていない病院はそれ以外で算定という形になります。

短期滞在手術等基本料3

入院にて、この短期滞在手術等基本料3の対象となっている手術を行った場合に算定することができます。医療機関の類型等によって算定方法が複数に分かれています。

・DPC対象病院:短期滞在手術等基本料3の算定ができない。DPCで算定。

・DPC対象でもDPC算定病床以外(例:地域包括ケア病棟等): 出来高算定。

・DPC対象以外の病院: 短期滞在手術等基本料3の算定が可能

・有床診療所: 短期滞在手術等基本料の算定ができない。出来高算定

このように、医療機関の種別や病床区分によって算定方法が複雑化している点が、大きな課題となっています。

前回(令和6年度)診療報酬改定の振り返り

令和6年度診療報酬改定では、短期滞在手術等を外来へ移行させるための施策として、短期滞在手術等基本料の対象手術が重症度、医療・看護必要度の評価対象に追加されました。

これにより、短期滞在手術等基本料の対象手術を行った患者は、重症度、医療・看護必要度の基準外となるケースが多くなり、外来移行を後押しする制度設計がなされています。

入院と外来での点数差がもたらす影響

外来移行を促進したいという政策的な意図が示されている一方で、実際には入院で実施した方が点数が高いという矛盾した構造が残っています。

特にDPC病床や地域包括ケア病棟では、短期滞在手術等基本料3を算定した場合、外来よりも高い点数設定となっています。

この点数差が、結果として入院での手術実施を選択するインセンティブとして作用している可能性があることは否定できません。

参考までに、地域包括医療病棟入院料と急性期一般入院料、地域包括ケア病棟を比較した「入院患者数上位の疾患」について見てみますと、地域包括ケア病棟等における短期滞在手術等基本料3の出来高算定が最も点数が高いというところも踏まえてか、地域包括ケア病棟等においての上位疾患は、白内障の疾患と大腸の良性疾患がトップ2となっているというような状況もあります。

外来実施率に関するデータとばらつきの実態

前回の診療報酬改定の議論の際に示されておりますデータでは、眼内レンズ挿入術の外来実施率は56.5%大腸ポリペクトミーは75.1%となっています。

一方で、医療機関別に見ると、外来実施率が100%の施設がある一方、0%の施設も存在しており、ばらつきが非常に大きいことが分かります。

特に病院と診療所を分けて分析した場合、眼内レンズ挿入術の外来実施率が22.6%と、極めて低い水準にとどまっている点が注目されています。

OECD諸外国との比較から見た日本の現状

「医療資源の投入量に地域差がある医療」に関する資料において、白内障手術については、OECD諸外国では90%以上が外来で実施されている国が多いのですが、日本では外来実施率が約54%にとどまっています。

諸外国に比べると有意に低いということも踏まえまして、日本においての白内障の手術はより外来で実施されるよう促進していく必要があるのではないか、ということが示されるデータとなっています。

 入院で実施する理由として挙げられている要因

入院で実施する理由は、点数だけではありません。

大腸ポリペクトミーおよび眼内レンズ挿入術において、原則外来で実施していると回答している病院に対して、それにも関わらず入院で実施する理由を聞いたところ、1番多かった回答は「臨床上、入院での周手術期管理の必要性が高い」でした。

さらに、入院での周手術期管理を行う必要性が特に高い具体的な理由を挙げてもらったところ、

・大腸ポリペクトミー: 出血のリスクの高い症例

・眼内レンズ挿入術: 全身麻酔を行う必要性が高い症例

この「全身麻酔を行う必要性が高い」という症例の、さらなる具体的な理由としては、「認知症により安静を保つことが困難」というような回答が多くみられています。

患者側から見ても、「入院の方が安心」という思いから希望されるケースもあるかと思います。

現在、診療報酬上では「どのような場合に入院が望ましいか」という明確なボーダーラインは設けられておらず、各医療機関の判断に委ねられています。

今後検討されている改定の方向性

こうした状況を踏まえ、今後の診療報酬改定(令和8年度以降)では、以下の方向での検討が進んでいます。

・入院と外来の点数差の縮小:外来への移行をさらに後押しするため、入院の方が総請求点数が高いという現状を見直し、その差を縮める方向で議論されている。

・算定方法の統一(短期滞在手術等基本料3への集約):病院の機能やDPC対象か否かに関わらず、対象手術を行った場合は「短期滞在手術等基本料3」を同一算定とする方向で検討されている。

「各病院様の経営状況も踏まえて」というような意見も出ていたようですが、これらの事項は促進・推進されていく方向での改定が入ってくるものと思われます。

最後に

これまでは「入院の方が安全だし、点数も高いから」という判断で入院手術を継続してきた病院様も多いかもしれません。しかし、国の方針としては、「外来でできるものは外来へ」という流れを止めることはないでしょう。

今後は、病院経営の観点からも、自院の実施率や他院の動向を把握し、外来移行への準備を進めていく必要があるのではないかと感じています。

本日の内容が、皆様の病院経営の参考になれば幸いです。